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平成十三年三月六日提出
質問第三九号

ペルー共和国前大統領アルベルト・フジモリ氏に関する質問主意書

提出者  辻元清美




ペルー共和国前大統領アルベルト・フジモリ氏に関する質問主意書


 現在我が国に滞在するペルー共和国前大統領、アルベルト・フジモリ氏(以下、フジモリ氏という)に対して、大統領在任中の人権抑圧の責任、反対派の迫害、政権要人による広範な不正蓄財等により、即時帰国して国民の前で真実を明らかにするべきだとのペルー国内世論が高まっている。政府の見解によればフジモリ氏は日本国籍を保持していることが確認された為、我が国に滞在することにはなんら問題がないとのことであるが、同氏がペルー国民の強い要求にもかかわらず自身に対する種々の疑惑から逃れる形で日本に滞在し続けることは同国と我が国との外交関係に重大な影響を及ぼす懸念がある。本問題に関して政府の見解をただすため以下質問する。

一 フジモリ氏の日本国籍について

 1 政府は日本国籍と外国籍を併せ持つ、いわゆる二重国籍者についてどのように把握されているのか、明らかにされたい。
 2 政府はフジモリ氏の日本国籍保持という事実をいつから承知していたのか、明らかにされたい。また、二〇〇〇年一一月二一日にフジモリ氏自身により日本国籍保持の認識が表明されたが、それ以降の確認作業は、いつどのように行われたか、その事実関係を明らかにされたい。
 3 フジモリ氏は二〇〇〇年一一月一七日に来日し、その後一二月一二日に日本国籍が確認された旨の発表がされたと承知している。その間、ペルー国会では一一月二一日(現地時間)に大統領の罷免決議がなされ、翌二二日(同上)には後継大統領が就任している。来日後国籍確認に至るまでの間、同氏はいかなる滞在資格により滞在していたのか、明らかにされたい。
 4 一九九〇年七月にフジモリ氏はペルー共和国大統領に就任している。フジモリ氏がいわゆる日系人であることは当初より公知の事実であったと考えるが、日本政府はその就任時点でフジモリ氏の国籍を確認したのか。もし確認を怠ったのであれば職務怠慢であると考えるがいかがか。また、その時点で政府がフジモリ氏の日本国籍保持を確認していたのであれば、国籍法第十六条第二項に基づき国籍喪失の宣言を行ったのか明らかにされたい。もし行わなかったのであれば、その理由並びにどのような場合にこの条項に基づく宣言がありうるのか、明らかにされたい。
 5 外国の外交官および外国公館職員はそれぞれ「外交」「公用」の在留資格をもって本邦に在留し、これらの者が着任する場合あるいは任務を離れて在留を継続する場合には、当該国在京大使館の口上書による着任、離任等の通知および地位変更の要請を受けてから、本邦における在留資格等法的地位の変更等許可行為を政府が行うものと承知している。フジモリ氏の場合についても、この間にその法的地位に変更があったと考えるが、ペルー共和国在京大使館から同氏の大統領職の離任、解任等の通知および地位変更の要請を受けたのか。受けているのであれば、その日時および内容を明らかにされたい。万一受けていないのであれば、同氏が大統領職を離れたことをいかなる手段をもって確認したのか、またペルー共和国在京大使館の通報および要請を受けずに法的地位変更を行ったのであれば、その理由を明らかにされたい。

二 フジモリ氏の件に関するペルー政府との協力について

 1 ペルー政府より日本政府に対して、行政レベルでの捜査協力要請は行われたか。行われた場合には要請の詳細な内容と政府の対応について明らかにされたい。協力要請ではなく、打診のみが行われた場合には、その打診内容及び政府の回答について明らかにされたい。
 2 ペルー司法当局より司法レベルでの協力の要請が行われたかどうか政府は承知しているか。承知しているとしたらその把握しているところを明らかにされたい。
 3 ペルー国内では、モンテシーノス元大統領顧問を調査しているペルー国会の委員会がフジモリ氏の喚問を追求していた件に関連し、日本政府は昨年一二月二二日に駐日ペルー大使館を通じて抗議を提出したと報道されている。抗議した事実はあるのか。また、その内容はいかなるものであったのか、明らかにされたい。また、ペルー国会の調査委員会による日本政府への協力要請に対し、政府は国内法により司法当局以外の機関による要請は受けられない旨回答したとも報道されている。これは事実か。事実であれば、その法的根拠を明らかにされたい。さらには、日本政府は捜査協力に関連してペルー側が提出する文書を日本語で作成するように要求したとも報道されている。これは事実か。事実であれば、その法的根拠を明らかにされたい。
 4 フジモリ氏については、現在も警察による身辺警護が提供されていると聞く。このことの法的根拠を明らかにされたい。
 5 フジモリ氏のなした人権侵害の事実が明らかになり、ペルー政府からフジモリ氏の身柄引渡請求がなされた場合、政府はどのように対応されるのか。政府の見解をお示しいただきたい。
 6 フジモリ氏のような重国籍者の場合、重国籍者の一方の本国が他方の本国に対して国際請求をなしうるかどうかを判断するにあたって、二つの国籍のうちどちらがより実効的な国籍であるかを考慮すべき、とする国際法の有力な学説がある。また、我が国の逃亡犯罪人引渡法はそもそも二重国籍を想定しておらず、日本国民の引渡しを条約が存在する場合に限定するその規定は形式的に解釈すべきではない。したがってペルーの大統領まで務め、その実効的国籍がペルーであることは明らかであるフジモリ氏が形式的に日本国籍を有していることはフジモリ氏をペルーに引き渡すことの障害にはならないと考えるがいかがか。
 7 日本は、拷問事件の容疑者が自国の管轄下の領域で発見された国は容疑者を引き渡さないのであれば自国内で訴追する義務がある(第七条及び第八条)旨を定めた拷問等禁止条約を批准している。アムネスティ・インターナショナルのピエール・サネ事務総長も本件に関連して日本がこの義務を負うことに注意を喚起していると聞くが、今後フジモリ氏の拷問事件への関与が十分に明らかになった場合、政府は身柄引渡しか国内訴追のいずれかを迫られることになると考えるが相違ないか。

三 ペルーとの二国間関係及び国際社会における我が国の地位に及ぼす影響について

 今日の世界では軍事力の有効性が相対的に低下し、いわゆる「ソフト・パワー」の重要性が相対的に増している。軍事力に頼らない外交を国是とする我が国にとって、このようなソフト・パワーの増強に意を用いなければならないことは言うまでもない。そしてソフト・パワーの重要な要素は、その国が持つ魅力であり、諸国に尊敬の念を持たれることである。
 1 フジモリ政権についてはペルー国内を中心に「人権侵害を重ね、民主主義制度を次々に骨抜きにし、軍・警察の情報部門を党派的道具として反対派を迫害している」との糾弾の声が多々聞かれる。政府はそういった迫害等の事実を把握されているのか、明らかにされたい。
 2 1の事実を把握されているのであれば、何故そのような政権に対して様々な形での援助を続けてきたのか、その理由も併せて明らかにされたい。
 3 1の事実を把握されていないとしたならば、外務省の国際世論の動向に関する情報収集能力に疑問を抱かせる由々しき事態と考えるが、そういった声が聞こえる中で援助を続ける政府の姿勢が「日本は人権と民主主義の重視を言いながらも口先で言っているに過ぎない」との印象を世界に抱かせ、さらに今になってフジモリ氏に日本国籍を認めたことが「日本はフジモリ氏をかくまっている」との印象を世界に与えることとなり、そのことは日本の理念の力、日本の魅力を大きく損ない、我が国の国益を著しく損なう事態になると考えるが、これについて政府の見解をうかがいたい。
 4 今後の捜査の展開により迫害の事実が公のこととなった場合、政府はいかにして世界からの信頼の回復を図るつもりか、明らかにされたい。
 5 ペルーのカルデロン検事総長はさる二月二八日、フジモリ氏を大統領の職責の放棄・不履行の罪でペルー最高裁判所に刑事訴追し、また同氏の不正蓄財についての当局による捜査も継続している旨承知している。政府はこのような状況の中で、前記のような国際的批判の動きあるいは日本・ペルー両国の友好関係保持といった諸要素を勘案し、フジモリ氏に対しペルーへの自発的な出国を説得する用意はないのか、明らかにされたい。

四 ビクトル・アリトミ前在京ペルー大使について

 1 前在京ペルー大使であるビクトル・アリトミ氏は、大使解任後も日本にとどまっていると聞く。日本国籍を所持していないと思われる同氏の現在の滞在資格は何か、明らかにされたい。
 2 同氏について、政府はペルー共和国在京大使館の口上書などにより大使解任の通知および法的地位変更の要請を受けたのか。受けている場合には、その日時および内容を明らかにされたい。

 右質問する。



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