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在宅ターミナルケアの実情アンケート結果から考える

投稿日:2018.01.23

「家族による介護から社会で支える介護へ」を合言葉に、2000年4月1日より介護保険が施行されてから、間もなく20年を迎えようとしています。この間、地域包括支援、アドバンスケアプランニング(ACP) といった概念も導入され、最近では「人生会議」なる言葉も登場しました。

在宅で自分の人生を完結させたいと望む人すべてが望み通りの最期を迎えられるためのアプローチの一つとして、ナースマガジンではターミナルケアに関する訪問看護ステーションへのアンケートと、WEBセミナーを企画しました。
以下に、アンケート調査結果の一部とWEBセミナー講師の小野沢滋先生(みその生活支援クリニック院長)からのコメントをご紹介します。
皆さんの明日からの訪問のお役に立てていただければ幸いです。( 編集部)
ターミナルケアの対応において、課題と思われることを3つまで選んで下さい。
上位を占めたのは、かかりつけ医や家族との連携ですが、その他の課題を見てみると、「家にいたいがお金がない」「看護以外のサービスを利用せずQOLが低下している」「病状よりも介護ができないことでの入院が増えている」「独居・精神疾患の併発」「困窮」など、患者・家族の生活視点に立った課題が上がりました。
実際に連携しているかかりつけ医について、課題や個人差を感じることがありますか?

『在宅医との課題』は78%が「あり」と回答しています。
「利用者の希望と在宅医のリスクに対する考え方のずれにより希望が実現しない」「看護側の問題点として医師への報告が不足していたり、勝手な判断をしてしまう職員がいる」「定期的なカンファレンスは必須だが、関係者が一堂に会する日程調整が難しい」という、在宅医療の目的や方向性の不一致、カンファレンスの重要性を承知した上でのジレンマに悩んでいる様子が見て取れました。
『在宅医としての個人差』については、「よくある」41%、「ある」21%、さらに「たまにある」24%を含めると、なんと86%の訪問ナースが個人差があると感じています。
具体的に個人差を感じる点について、あてはまるものを選んでください。
個人差として感じていることのトップは「患者・家族への対応」でした。そのあとに続く「在宅医としての経験の差」から生じる知識、診療・治療技術の差によることもあるのでしょうが、「かかりつけ医としての責任感」については差があってはならないことだと思います。

自由回答では

● 主治医との連絡がつきにくく、苦痛対処が遅れたり看取りが間に合わないことがある
● 主治医と家族の思いの共有ができておらず、家族の希望が通らない時がある
● 点滴管理や麻薬管理のできない在宅医がいて、対応に困ることがある
などなど、病を診ずして病人を診よ、とはよく言われるものの、症状コントロール(病を診ること)が十分できないとあっては、訪問ナースのみなさんのご苦労はいかばかりかとお察しいたします。

実際に訪問されているナースのみなさんは「あるある!」ネタだったかもしれませんが、退院調整・退院支援の担当ナースの方は、在宅医療、訪問診療を標榜している先生方との連携時に確認しておくべきポイントとして、頭の中に入れておいていただけたらと思います。

では、長年にわたり在宅医療に関わっていらっしゃる、小野沢滋先生にお話を伺ってみましょう。

安全から尊厳へ

〜在宅で叶えたい 希望をキャッチする〜

アンケートには「患者家族の希望と在宅医のリスクに対する考え方のずれにより希望が実現しない」というコメントがありました。
医療者が患者の安全を優先するのはもちろん鉄則なのですが、ターミナル期においてもそれを当てはめるのはどうでしょうか。
患者本人やご家族が、転ぶかもしれないけれど外出したい(させたい)、喉を詰まらせるかもしれないけれど、もう一度好きなものを食べたい(食べさせたい)、という希望を持っていたら?

みなさんに覚えておいてほしいことは、私たちの目の前の患者家族が何を希望しているのかを考え、その実現のために丁寧に対応することがターミナル期には求められているということです。希望と安全は両立しない、といってもよいでしょう。いくら患者の安全を考えて、とはいえ「在宅は無理だ」「もう入院しかない」といった呪いをかけて希望をつぶさないようにしたいものです。


まずその希望が何なのかを聞き出すことから始まります。「○○の状態になったら延命を希望しますか?」
「はい・いいえ」と答える質問ではなく、その答えの背後にある真実を見つけられるような、視野を広げる質問のできる技術を身につけてほしいのです。
質問の仕方を変えることで、本人の答えが180度変わることを私も経験しています。そして、解決可能な単位に課題を小分けして、対応してみてください。

在宅医も1日に訪問する件数、訪問時のクリニック側の人数、在宅滞在時間、全てがクリニックによって違います。ケアの質もそれぞれ違います。看護師の場合には認定看護師であればほぼ均質と言って良い知識を持っていると思いますし、専門家としての質の担保という点では、看護師の皆さんの方が遙かに優れていると私は思います。
ターミナル期の患者さんの1日と私たちの1日の重さの違いをかみしめて、情報収集を怠らず信頼できる在宅医探しを慎重に行うことも皆さんの役割です。最期は自宅で過ごしそこで亡くなりたいという希望があれば、それを叶えてくれる、看取りまで責任を持って対応してくれる在宅医と連携しましょう。

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