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一十三十一(ひとみとい)が誘う音のロマンティック・リゾート
ビジュアルワークとサウンドが完璧に機能する高品質シティポップ
ホイチョイ3部作の『私をスキーに連れてって』にオマージュを捧ぐ
『Snowfbank Social Club』インタビュー&動画コメントが到着

 街場、浜辺、そして白銀の世界へ――。’12年に5年ぶりのアルバム『CITY DIVE』でシーンに帰還以降、“シティポップ”という新たなフィールドを縦横無尽に駆け巡る一十三十一(ひとみとい)が、昨夏に発表した『Surfbank Social Club』と対になる新作、その名も『Snowbank Social Club』をリリースした。前作同様’87~91年に一世を風靡したホイチョイ3部作にオマージュを捧げた今作は、『私をスキーに連れてって』(‘87)にスポットを当て、クニモンド瀧口(流線形)、Kashif、LUVRAW&BTB、grooveman Spot、Avec Avecという気心知れた製作陣に加え、新たにtofubeats、PUNPEEもクルーに参加し、刺激的なサウンドパーティーを続行。そして、ジャケット、ブックレット、MVに至るまでが楽曲と連動した徹底的なビジュアルワークも彼女の売りだが、今回もアパレル・ブランドYugeのデザイナー、弓削匠のアート・ディレクションが完璧に機能。今作ではゲレンデを舞台に、そのコケティッシュでエキゾチックな色香漂う歌声を存分に聴かせてくれている。そんな一十三十一からの、アーバンな冬のご提案。洗練されたアウトプットに対して現場の人間味溢れる裏エピソードが続出したインタビューで(笑)、また彼女に魅了されてしまうのでした。

 
 
今回はもう群を抜いて過酷でした
 
 
――前作『Surfbank Social Club』(‘13)から7ヵ月で早くも届いた『Snowbank Social Club』なんですけども、前回のインタビューのときから既にもう。
 
「匂ってましたね(笑)」
 
――完全に対になる作品であり、下手したら『Snowbank Social Club』の方が先に動いてたんじゃないか?っていうね。まずはその成り立ちから聞きたいなと。
 
「『Surfbank Social Club』は夏が舞台だったんですけど、今回は新しくtofubeatsくんやPUNPEEくんに参加してもらったものの、ビジュアルワークはもちろん製作陣を同じチームで引き継いで、Surf&Snowで完結という感じで“冬のアーバン”を作ってみました」
 
――当初から2作トータルで動き始めていたと思うんですけど、今回のジャケットも昨シーズンに雪山で撮って。
 
「そうですね。先を見越して『Surfbank Social Club』より前にMVとジャケットを撮りに行っていて。だから、昨シーズンは通算6回ぐらい撮影でゲレンデに行ってたんですよ。当初は12月末リリース予定だったので、先シーズンに撮っておいたものを使おうと思ってたんですけど、結局吹雪でなかなか撮れなくて(笑)、今シーズンに入ってすぐに改めて撮りに行って、ギリギリ1月29日リリースっていう流れになってるんです(笑)」
 
――リリーススケジュール的にジャケットだけ先に撮っておいて、MVは今シーズン撮ろうとかじゃなくて、ホントは昨シーズンに撮り切るつもりだったんですね。
 
「そうなんですよ。私は札幌出身なんですけど、もう見たこともない吹雪でリフトも動かないし、お客さんも1人もいないみたいな感じ(笑)。なので昨シーズンはロッジのシーンが主に撮れたんですけど(笑)。肝となる滑るシーンとかはまるで撮れなくて」
 
――そうかそうか、だから頻繁に撮りに行っていた割には、前もって動いてた割には、だったんですね。また夏とは違う苦労がありますね。
 
「ビジュアル関連は毎回過酷で、『CITY DIVE』(‘12)は冬のプールでの撮影が寒くて、『Surfbank Social Club』もウェットスーツを着るのが辛いとか」
 
――ありましたね。ウェットスーツが小さ過ぎる事件が(笑)。
 
「フフ(笑)。こう見えて崖ギリギリに立ってるとか、結構大変な撮影だったんですけど、今回はもう群を抜いて過酷でした。寒いし」
 
――札幌出身でも寒いもんなんですね。
 
「こんな薄着で雪山は初体験だったので、まるで感覚がなくなって。今回のジャケットもリフトで山頂まで上がって、さらにそこから30分ぐらいハイクして、このスポットまで行くんですよ。かなりヘトヘト(笑)。フカフカの新雪に膝ぐらいまで埋まりながら何とか足場を固めて、結構な傾斜なんですけど、スキーヤーたちが飛んではまた登ってっていう。このジャケットはもう奇跡の瞬間ですね。またそのカメラマンが、例によってフィルムで撮るルカ・ガビーノっていうイタリア人なんですけど。一十三十一企画では敢えて全体的にアナログで作り込んでいくっていう」
 
――でも、苦労の甲斐あってかこのジャケットを見たとき、やっぱ今回もビジュアルワークが完璧だなって思いましたよ。だがその奥には(笑)。
 
「かなり過酷なストーリーがあるんですよね(笑)」
 
 
寒いからこそホットになるような曲を作りたい
 
 
――実際のレコーディングに関してはどうでしたか?
 
「『Surfbank Social Club』のリリースライブが終わったぐらいから何となく制作に取りかかったんですけど、やっぱり真夏に、せっかく楽しい真夏に(笑)、意識を真冬に持っていく作業が…元々ブリージーな私としては(笑)、結構新しい挑戦というか。冬の曲を10曲作ること自体がまず修業みたいな感じなんで。冬の間に夏をイメージして作る10曲よりも、脳内的に厳しい感じが(笑)」
 
――夏の方がやりやすいもんなんですね。
 
「寒い冬に砂浜とかを想像しながら書くよりも、みんなが開放的になって楽しく遊んでいる夏に、わざわざ家に閉じこもって冬のことを考えるドMい感じがキツいなぁ…って(笑)。でも、ゲレンデだったり雪景色は私の原風景だったりもするんで、ちょっと懐かしい感覚にもなりつつ、ホントにいい経験でしたね」
 
――シティポップと冬のマッチングはやってみてどうでしたか?
 
「“冬もアーバン”っていうのが今回の提案だったりするんですけど、リゾートだったり、雪の降る大通りを歩く大人たちだったり…当初は結構ホーリーなものを作ろうと思ってたんです。けど、撮影の遅れもあってリリースが遅れて1月になっちゃって、そうなると12月モノは作れなくなるじゃないですか!」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「いわゆるクリスマス・ソングは作れない。それって冬の一番のロマンティックを逃してるじゃないですか。だから制作的には、12月の曲なしでどう盛り上げていくかはありましたけど、やっぱり寒いからこそホットになるような曲を作りたいなって。夏じゃ描けない深みだったり熱さをここぞとばかりに、サラリというよりもちょっと濃厚な感じに仕上げられたんじゃないかなぁと思います」
 
――前作もそうでしたけど、やっぱり冬でもアーバン語録はあるもんだなぁと(笑)。歌詞カードがだんだんシティポップ辞書みたいになってきてますよね。
 
「フフフフ(笑)。あと、何回も撮影に行く度にいろんな風景を見られたのも、作詞にはすごく役立ちました。思い出だけじゃなく思い出すというか、子ども時代の雪の記憶だけじゃなくて、今の感じが生々しくあるので。何度も雪山に行くハメになったチームの皆さんには申し訳ないんですけど(笑)」
 
 
大人がわざわざ楽しむ感じがいいんです
 
 
――前作に引き続きホイチョイ3部作のオマージュということですけど、その冬にあたる『私をスキーに連れてって』(‘87)は改めて観ました?
 
「観ました観ました! ホンットに胸キュンでしたね。あの胸キュン・エフェクトを作りたいので、みんなにも制作前にまずは観てくれって伝えて。子どもの頃にリアルタイムでは観てるんですけど、当時は内容が分からないけど雰囲気は何か好きみたいな感じだったものが、やっぱりこう女35になり改めて観ると(笑)、すごく共感出来るし、胸キュンだし。いやもう何度観たか分からないですね、今回もまた(笑)」
 
――僕も3部作の中やったら一番好きですね。
 
「おもしろいですよねぇ~。前作の元になった『波の数だけ抱きしめて』も大好きですけど、結局はハッピーエンドにしない歯痒さだったり悔しさがいろいろある一方(笑)、『私をスキーに連れてって』はハッピーエンドですしね。今回も脚本を元にMVが作られたんですけど、言わば夏にすれ違った男女が冬に成就するみたいな。だから『Surfbank Social Club』よりはほっこりした内容というか」
 
――夏だからまだムード的に別れを受け入れられるというか、冬に別れたら辛過ぎる(笑)。
 
「そうなんですよね(笑)」
 
――僕なんかはやっぱり北の出身じゃないので、日帰りで行けちゃう海とは違って、例えばスキーに行く=旅になるんですね。だからよりドラマチックに映るというか。
 
「そうなんですよね。何か大人がわざわざ楽しむ感じがいいんですよ。ロッジの中から眺めるゲレンデだったり、露天風呂から見る雪景色だったり、雪見温泉的効果も狙ってね(笑)」
 
――前回のインタビューでも、完全なるファンタジーじゃなく日常と地続きの実現可能なファンタジーを描きたいと言ってましたが、そういう意味でもすごくフィットしますよね。手間暇掛ける贅沢な遊びというかね。
 
 
お互い連絡先は知らなくて、Twitterで声掛けてみたいな(笑)
 
 
――今作では新たに制作に参加したアーティストもいますけど、それこそラッパー=PUNPEEのフィーチャリングが初めてっていうのが意外だなぁと。
 
「私も意外だったんですけど(笑)。『CITY DIVE』はKashifくんと、『Surfbank Social Club』はLUVRAW&BTBとデュエットしてきたんですけど、PUNPEEくんとは夏のイベントが結構かぶることが多くて、パフォーマンスもカッコいいなと思っていて。当初は歌のデュエットを考えていたんですけど、ここはラップを入れてもらおうと。ただ、何度か会ってはいたんですけどお互い連絡先は知らなくて、Twitterで声掛けてみたいな(笑)」
 
――おぉ~今時な感じですね。
 
「そしたらすぐにいい返事をいただいて、デュエットソングだし、電話がテーマのロマンティックがいいんじゃないかみたいな話になって、『Night Flight Telephone Call feat. PUNPEE』(M-3)が出来たんです。PUNPEEくんのラップがすごくよくて、もう一番最初のデモのタイミングから完成度が高いというか、ホントにカッコよかった」
 
――そして、『Diamond Dust』(M-9)に参加したtofubeatsは今話題の若手クリエイターですけど、最初の接点は?
 
「出会い的には私がtofuくんの『水星』のMVを観て衝撃を受けて、ついTwitterで“『水星』ヤバい!”みたいなことをつぶやいたら(笑)」
 
――駆使してるなぁ(笑)。
 
「フフフ(笑)。そのつぶやきにtofuくんがバッと反応してくれて。そこから、『CITY DIVE』のアナログを作ったときに『ハーバーライト』のリミックスをしてもらった感じですね。オリジナルでもtofuくんにはやってもらいたいなと思ってたんで、じゃあこのタイミングで是非と。私の渡したデモとはガラリと世界観を変えてきたんで、おもしろかったですね。『Diamond Dust』は元々はテンポのある曲で、tofuくんのことだから結構アゲめのディスコ調とかパーティー感のあるものでくるのかなと思いきや、素敵な裏切りがあり、BPMがすごく落ちて、割と聴かせる感じの削ぎ落とされたアレンジになって。そのアレンジにインスパイアされての作詞だったりもしましたね」
 
 
ホントに今はすごくいいチームでやれてます
 
 
――『Surfbank Social Club』『Snowbank Social Club』と続いたこのプロジェクトも、遂に完結というか。
 
「そうですね。ようやくMVも上がって」
 



――前回同様、シナリオは上がってるもののMVはリリースには間に合わないっていう、鉄板の流れが(笑)。
 
「大体1ヵ月ぐらい遅れて現れる(笑)。ナイターのシーンが一番寒くて、スーパースローで撮ってるからBPMが300ぐらいあるんですけど、寒過ぎて唇の感覚がないのにリップシンクするみたいな。あのときはホントにこのまま死ぬんじゃないかな…と思うぐらいでしたけど(笑)」
 
――観た人はまさかそんなに命懸けで撮ってるとは思わない。もっとオシャレに撮ってると思ってる(笑)。一十三十一のアウトプットの洗練さに対して現場の根性感はすごい(笑)。
 
「そうそう(笑)。かなり体育会系で、撮影も毎回どういう風に撮れてるのかがあんまり分かんなくて、出来上がるまで1年越しで謎でしたけど(笑)、いいMVが出来てよかったです。撮影にも何回も行ったので結束力というか、晴れの瞬間の喜びシェアとかヤバかったです(笑)。ホントに今はすごくいいチームでやれてますね」
 
――毎回、ジャケット、歌詞カード、MVにわたる隅々まで、徹底したビジュアルワークは本当に素晴らしいですね。ここまできっちりと世界観を作り上げてくると、普通のMVじゃもう物足りなくなるんじゃないかっていう(笑)。
 
「そうそう!(笑)。もうストーリー仕立てじゃないと」
 
――街場、浜辺、雪山と移動していった一十三十一のシティポップは、次はどこに向かうのかに興味がそそられるところですけど。
 
「今もみんなでちょっと企んでいるので。まぁ夏ですね。この夏にまた何か」
 
――2014年もまだまだ動くと。しかし、ここ1年半で4枚アルバムを出すペース。恐ろしいですね(笑)。毎回さすがのクオリティですし。次のアウトプットを楽しみにしています!
 
「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2014年3月21日更新)


Check

Movie Comment

独特のテンポと色香にメロメロ!?
一十三十一嬢からの動画コメント!

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ゲレンデ特有の非日常感のトキメキを
きらめくシティポップで構築した1枚

Album
『Snowbank Social Club』
発売中 2700円(税抜)
Billboard Records
HBRJ-1011

<収録曲>
01. Snowbank Social Club 1
02. Catch Me in the Snow
  ~銀世界でつかまえて~
03. Night Flight Telephone Call
  feat. PUNPEE
04. Winter Rouge Mellow
05. Silver Wind ~移りゆく季節~
06. Snow Storm Loneliness
07. Frozen Horizon
08. Chocolate Neverland
09. Diamond Dust
10. Snowbank Social Club 2
11. Park Suite feat. BTB
12. Awakening Town

Profile

ひとみ・とい…札幌出身。’02 年に『煙色の恋人達』でCDデビュー。“媚薬系”とも評されるエアリーでコケティッシュなボーカルで、アーバンでエキゾな独自のポップスを展開。’07 年にはディスニーアニメ『リロイ&スティッチ』のエンディングテーマを歌う『JINTANA&EMERALDS』はじめ、別名義でのプロジェクトにも多数参加し、CM音楽やナレーションなど様々なフィールドで活躍。’11 年初夏には、初の主演映画『百合子、ダスヴィダーニャ』が公開され、’12 年には5年ぶりとなるオリジナルアルバム『CITY DIVE』と邦楽カバーアルバム『YOUR TIME Route1』をリリース。’13年には、’87~91年に一世を風靡したホイチョイ3部作の『波の数だけ抱きしめて』(‘91)にインスパイアされたアルバム『Surfbank Social Club』を発表。今年1月29日には、その続編となる『Snowbank Social Club』をリリースした。

一十三十一 オフィシャルサイト
http://www.hitomitoi.jp/


Live

豪華ゲストを迎えた一夜限りの宴が
ビルボードライブ東京で開催!

 
【東京公演】
『一十三十一~Special Night~』
チケット発売中
▼3月24日(月)19:00/21:30
ビルボードライブ東京
自由席6800円
[ゲスト]江口ニカ/Dorian/西寺郷太/Saigenji
ビルボードライブ東京■03(3405)1133
※未就学児童は入場不可。チケットはサービスエリア自由席。入場整理番号が必要となります。入場整理番号の発行は問合せ先までご連絡ください。その時点でお客様の入場整理番号が決定します。尚、整理番号をお持ちでない方は最後のご案内となります。他に指定席もあり。詳細は問合せ先まで。


Column1

ホイチョイ3部作の
『波の数だけ抱きしめて』を
アップデートしたクールで
メロウなシティポップ!
『Surfbank Social Club』
前回インタビュー&動画コメント

Column2

5年ぶりのオリジナルアルバム
『CITY DIVE』と80s邦楽カバー
『YOUR TIME Route1』で魅せた
ニューモードは“シティポップ”!
初登場インタビュー&動画コメント